これまでディズニー映画の舞台設定を考察する記事をいくつか書いてきたのだが, 結構人気があったので, 少し手を広げて漫画の考察に挑戦してみたい。
題材はナルト。
著者が住むUAEをはじめ海外では最も人気の日本漫画作品である。
この物語の終盤で第四次忍界大戦という各国を巻き込む戦争が勃発するのだが, 穢土転生の術により蘇った各国のかつての忍びの里長である歴代影たちと砂漠を戦場とした戦いがある。
この舞台設定について砂漠の国に住む著者が考察してみたい。
ナルト56巻の冒頭より。
地面は結構固そうで土漠のようにも見えるが, この後に出てくる戦闘シーンでは砂が地面を覆っていて明らかに砂漠である。そして特徴的なのが自然にできた柱が何本もそびえる地形。
このような地形は中東でも似たようなものが散見される。例えばエジプトの白砂漠。
首都カイロより南西にいった辺りにある地形なのだが白い砂と奇岩の数々がある。
また著者の住むUAEにも似たような地形が存在する。アラブ首長国連邦の首都アブダビ近郊にあるFossi Duneだ。こちらも人が乗れる大きさの石灰岩による奇岩が並ぶ神秘的な光景が見られる。
いずれにせよ中東アラブ世界をイメージした地形設定である。
この舞台での敵役として出てくるのが
二代目水影、二代目土影、四代目風影、三代目雷影の四人。
このうち三代目雷影は砂漠や中東地域との関連性はなさそうなのでこれを抜かし, 四代目風影から考察していきたい。
四代目風影
四代目風影である羅砂はその子供である五代目風影の我愛羅が迎え撃つ。
両者とも砂を操る忍術を用いた親子対決。
砂と砂の戦いは砂漠を舞台とする戦いそのものであり我愛羅の過去の真実が明らかにもなる作品の中でも重要なシーンである。
三代目の羅砂は磁遁により砂金を混ぜた砂を扱うことにより我愛羅の砂の動きを鈍らせるが, 結局は我愛羅の母親であるカルラの包み込む砂により我愛羅が勝利した。
技に使われた金は特にドバイにおいて貿易取引額が非常に大きく香港などと並び世界トップクラスである。
ドバイのゴールドスークは国の歴史よりも長く営業を続ける老舗店も含め多数の店舗が軒を連ねており海外旅行客の主要な観光スポットとなっている。
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Marketing/world/ae/uaepf_juwelry1808g.pdf
二代目水影
二代目水影が使うのは口寄せの術で呼び出した大蛤。大蛤こと蜃は日本では蜃気楼を作り出す妖怪としてみなされてきた伝説上の生き物である。
https://www.city.uozu.toyama.jp/nekkolnd/news/umoregi-pdf/030.pdf
水影は溶遁忍術を使う五代目の照美メイしかり, 名前の通り水系の忍術を使う忍びである。
そして二代目水影は水といっても油のような液体を扱うことができる。
これも石油が大量に埋蔵・産出される中東をモチーフとした舞台設定によくあう技だ。
油により我愛羅の繰り出す砂の術がきかなくなるという描写があるが, 砂に溜まる油という油田が形成される構造をも彷彿とさせる。
そして最後に捕らえられた時の四角錐の砂に埋まって封印されるシーンはピラミッドをモチーフとしている。
二代目土影
二代目水影のライバルとして登場するのが二代目土影の無。
そのキャラクター描写からしてミイラそのものであり, アラブ世界をイメージさせる本舞台に似合うキャラクターだ。
三代目土影である両天秤のオオノキの師匠にあたる人物であり, 希少な血継淘汰の持ち主でもある。
血継淘汰による風遁・土遁・火遁の組み合わせにより繰り出される原界剥離の術などの塵遁は強烈。
あらゆる物体が塵と化してしまう。
これもエジプトなどで触れれば塵となってしまうようなミイラが考古学者などにより発見されることをイメージさせる。